眠れぬ夜のすばる亭 〜幻想探偵フラクタル・1〜

「眠れぬ夜のすばる亭」というカテゴリが新設された。

その名の通り「眠れぬ夜」、幻想夜話のようにひとつふたつみっつ、あるいは百物語を目指して(?)、パソコンからサルベージした(すくいだした)”時効”の物語や詩/詞を置いていく計画である。

 

二つ目の作品は、「幻想探偵フラクタル」のプロット。

では。

—-

幻想探偵フラクタル

 

[解説]

漫画のプロットとして制作された。4つのエピソードから成るうち、

エピソード1,2をここで紹介する(3,4はこちら)。

 

[では、本文]

 

『フラクタル』プロット

 

□テーマ□

「幻想の悪夢」「ふたしかなたしかな世界」「世界の円環構造」

真理をもとめた探偵のなれの果て

自分という世界を拡大した、世界という世界

 

□構成□

Episode 1 : メタフィジカ-形而- (8P)

Episode 2 : レクイエム-鎮魂- (8P)

世界の話 (1P、文章)

Episode 3 : カタストロフ-破局- (8P)

Episode 4 : アポクリュフォン-啓示- (6P)

 

 

Episode1 8P

 

霧の都に迷い込んだ主人公の「僕」(男、現代の日本人、中学生〜高校生)

 

ここはどこだろう、異国の町並みをゆく

幻想的な画面、ぼうっとした印象

こんなに綺麗な、これはきっと夢――

 

そして僕は路地をまがり、

 

[ドン!!] と奇形の死体が転がっている

僕「!?!?」

死体のまわりには色のついたプルームが立ちのぼっている。

 

目をあげると霧のなかにも、ひときわ色の濃いプルームが漂っていて、それは二階くらいの高さではふよふよと、人の背の高さになると急激に――意志をもった生物のように速度を増して、通行人を襲撃した。

プルームに包まれた通行人が、僕の目の前でうめき、喀血して倒れた。

 

そしてプルームは次の標的に僕を選び、僕に襲いかかってきた。逃げようとしてつまずいた僕を、ななめ上から降下してきた影がさらい上げた。

(映画「ネバーエンディング・ストーリー」のファルコンのようなふかふか)

 

気づくと僕は、竜のような猫の腕に抱かれ、霧の都の空を飛んでいた。猫の竜は時計塔に降り立った。

 

「危ないところだった、君がやられてしまっては召還のしそこないだ」

「契約にはばかにならない円環石を投じたというのに」

「そう、それこそ倫敦市場を暴落させかねない円環ロンダリング…」

猫は、僕にはわからない話でひとりごちる。

 

「あのう、あなたは?」

「む」

猫は僕に向き直り、丁寧にお辞儀をした。

「私の名前はフラクタル。クロニクル世界の探偵だよ」

「探偵? くろに、くる……?」

僕はけげんな顔をした。こんなおかしな猫が、竜で、探偵で? ああ、でもこれは夢なのだっけ……。

「夢だと思っているのかい」

ぎらりとした猫の目が僕をのぞいた。

「え、うん、だって」

「あまりに非現実的で日常離れしている、と」

「うん…」

「まるでシュールなゲーム、漫画のようなふしぎな夢をみているものだ、と」

「うん…」

「幻想世界、平行世界、精神世界、そんなものは皆ファンタジーだ、と」

「そりゃ、うん…」

猫は高笑いをした。

 

「はあ、君はまさしく物質世界の申し子だね。私の召還は成功したというわけだ」

僕は「はぁ?」とこたえるしかない。

「いいかね、よく聞きたまえ。これは君の睡眠の中の夢ではないし、白昼夢や妄想、あまつさえ死後の世界ではない」

 

猫はイメージを見せながら、説明していく。

(クリスマス・キャロルのイメージ)

 

「さっきのプルームを見ただろう」

「あいつに襲われると、人は記憶(魂の蓄積)を吸い取られて歪む。君たちの住む形而下の世界の常識ではそんなことはないだろうが、精神の歪んだ人間は肉体も歪むものだ、君もあの奇形を見ただろう」

「この街はもうどうにもならない」

「どうしてそんなことになったのか」

「あのプルームはなぜ、どこからやってきたのか」

「君たちの世界だよ」

「君たちの住む形而下の世界で、君たちがあまりにスピリットをおろそかにして居場所を奪っているので、難民となったスピリットたちがこっちの世界に亡命してきている。しかし見ただろう、あのプルームたち!」

「なんと毒々しく凶暴なスピリットだろうね、君たちの世界のは」

「きっとうらやましくて襲うんだろう、私たちの――」

(精神が? 肉体が? 完成度が?)

 

ほとんど理解のできない猫の声は遠くなり、僕はぐるぐるとした渦に巻き込まれて――、自宅のベッドで目を覚ました。月曜日の朝、目覚ましの鳴る5分前。

 

「なんだ、やっぱり夢だったじゃん」

僕はつぶやいた。

そしてまた何事もない日常が、続いていくだけなのだ。これからだって、ずっと。

 

 

Episode2 8P

余命いくばくかの女の子(20歳手前、舞台のモデルは洛北)

 

(難病なんて、おとぎばなしのなかの出来事だと思っていたのに。)

大学、ほかの学生が談笑しながら、主人公と逆へ向かっていく。

(みんな、のんきだな。)

主人公、ベンチに腰かける。

(就職とかサークルとか、人間関係、恋愛、バイト……みんな、かわいい悩みだ。)

視線の先に、紫陽花が咲いている。

(あと何回見られるんだろう、紫陽花も)

(もしかして)

「来年がくるまえに、私、いなくなっちゃうのかもなぁ」

謎の声が、違和感なくこたえる。

『でも、私はずっと、いなくなりたかったんだよな』

「そうそう、夭折とか、あこがれてたなぁ」

『ほんとうに、私の願いって、なんでもかなうんだな』

「じゃあ、これも何度もお願いしたんだけど」

『私』

「そろそろあなたのこと、見てみたいよ」

 

ベンチに座る主人公の前に、主人公そっくりの猫人間が現れる。

 

「あなた……誰」

「誰だと思う?」

「私にそっくり、でも全然、私じゃない。鏡だとか影みたいな裏人格のふりをして私のこころに巣食っている、あなた……誰」

猫は目を細めてこたえた。

「僕の名前はフラクタル。クロニクル世界の探偵だよ」

「探偵?」

主人公はけげんに問い返す。

「探偵がどうして、私なんかのところ(こころ)に」

 

「すまない、君の魂が、あまりに綺麗だったから」

「なにそれ」

「この世界、君たちの世界を見てまわるのに、私には宿が必要なんだ。だけど、汚い宿は嫌だろう。……潔癖性なわけじゃない、歪んだ精神のところにとどまると、私まで歪んでしまいかねない。そうなっては本末転倒なんだ」

「なんのはなしをしているの」

 

猫は説明した。

「私の世界では今、多くの人が(こころもからだも)歪んでしまって、苦しんでいる。君たちの世界では、君のように円が閉じているのは珍しくて、歪んでいても構わないらしいけど、」

「人間が、歪んでいてもやっていける世界。そう、この世界、君たちの世界。私はそれを観察している、」

「君の精神を根城に、」

「わかるだろう」

 

主人公はずっと、ぼうっとした表情をしている。

だが、猫の最後の言葉で、はっと瞳を見開く。

 

「あなた……、あなたが……!」

 

薄霧がかかり、梅雨の小雨が降り出した中で、主人子と猫人間が向かい合っている。静かな時間に、主人公のモノローグ。

 

[私の直感が告げた。このよくわからない彼こそが、歴史上の哲学者が、求道者が、魔術師が求めた――そのものだ、と]

 

「あなた……、誰」

問い上げる私と彼のあいだに、一筋の光が差している。

それは神聖なるもののようでいて、この世界の私と向こう側の彼を隔てる、海溝よりも深い闇の光だ。

猫は不敵に目を細め、こたえた。

「僕の名前はフラクタル。クロニクル世界の探偵だよ」

 

「お嬢さん、あと96日ほど、宿を貸してもらえるだろうか」

私はうなずいた。

そうか、

私がこの世界にいられるのは、あと96日。

それまでに、見つけたい。残したい。この世界に、ちいさな「円」を。

 

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