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 特設展示『空の玉手箱 ~なつびより~』
... 2010年制作の絵本『なつびより』の展示フロアです。

■空の玉手箱

精霊たちの暮らす森、るせるか の奥の木のうろへ、風が季節をはこびます。

絵本「なつびより」

(01)
そこは精霊や魔法があふれる世界。
るせるか の森の中、大きなむくりの木が
そら と しの の家でした。

(02)
むくりの木の中はからっぽで、
ところどころにあいた うろ が
扉や窓なのでした。

(03)
「今日はなにをしようかな?」
そら は窓から葉っぱがいっぱいに茂った空を
見上げてつぶやきます。そら はそうやって一日をはじめます。

りす がやってきました。
「おはよう、りすさん」
「おはよう、そら。しのは?」
「しのはまだ寝てるよ。」

(04_1)
そら は長 ――― いマフラーを
ゆさゆさとゆさぶりました。

「しの、 朝だよ!」

きらきらした木もれ日で、
そら のマフラーは動き出しました。

「…………そら、おはよぅー。」
「おはよう、しの。」

(04_2)
しの は、そら のマフラーを寝床にしている精霊でした。
でも、今日はなんだか元気がありません。

「どうしたの?」

しの はひゅるりと
うしろに隠れてしまいました。

(05)
しの は小さくつぶやきました。
「夏がやってきたんだよ。
重くるしいよぅ」

そら はあわててマフラーを外してみました。

昨日までぽかぽかしていた日ざしや風は、
かすかに夏のにおいがしました。

(06)
そら は しの をかかえて
家をとびだしました。

(07)
森の中ではあちらこちらで
花やみどりが上きげんにおしゃべりしていました。
みんなより一足先にやってきた蛍火たちが
ふわりふわり踊っています。

「おや、そらにしのじゃない!」
「そんなに急いでどこへ行くの?」
そら は簡単にあいさつをして森を急ぎます。

(08)
昼さがりになった頃、そら は小さな沢に
辿りつきました。ここは、なゆなしの沢。
精霊たちのいこいの場です。

そら はじっと水面の色を見つめて、
そしてそっと、
マフラーを流れにひたしました。

(09)
木々がさわさわと音を立てて、
精霊がふわふわと歌いながら
沢の上をとんでいきました。

(10_1)

(10_2)
マフラーはだんだん水に溶けこんで、
もうすぐ見えなくなりそうです。

(11)
「それっ!」
そら は一気にそれを引き上げました。

(12)
布は夏色に輝いて、
風のように軽々と空を舞いました。

(13)
「ありがとう、そら!」
ゆれた夏空のしたに、しの の姿がありました。

(14)
「これで夏のしたくはばっちりだね!」

風になったマフラーを そら が再びまとうと、
しの は嬉しそうにその中に戻っていきました。


<Fin.>

制作:2010年


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